指定濫用防止医薬品とは何か

医薬品の基礎知識・制度
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⚠️ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。

1行でいうと

2026年5月1日施行の改正薬機法により、依存・乱用のおそれがある医薬品成分が「指定濫用防止医薬品」という法律上の区分に格上げされ、対象成分の拡大と販売ルールの義務化が行われました。制度の中身と、対象成分がなぜ規制対象になるのかを整理します。

  • 最近ドラッグストアで咳止め薬・風邪薬が買いにくくなったと感じている方
  • 「指定濫用防止医薬品」という言葉を見聞きしたが、仕組みがよく分からない方
  • 家族の常備薬として市販薬を選ぶ際に、制度の背景を理解しておきたい方

なぜ最近、咳止め薬・風邪薬が買いにくくなったのか

「ドラッグストアで咳止め薬を1個しか買えなかった」「棚から手に取れない場所に置かれるようになった」――こうした変化に気づいた方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の説明によれば、この制度改正の背景には、SNSを中心に広まった市販薬の過量摂取(オーバードーズ)の問題があります。本来の目的とは異なる使い方によって健康被害が生じるケースが指摘されるようになったことを受け、一部の医薬品成分について、販売時の確認や数量制限を法律上の義務として整備したのがこの制度です。

制度の概要:「濫用等のおそれのある医薬品」から「指定濫用防止医薬品」へ

実は、依存・乱用のリスクがある成分を含む市販薬への注意喚起自体は、以前から行われてきました。従来は「濫用等のおそれのある医薬品」という区分で、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンの6成分が対象とされ、販売時の確認は行政指導レベルの運用にとどまっていました。

2026年5月1日に施行された改正薬機法では、この位置づけが法律上の「指定濫用防止医薬品」に格上げされ、ルールの遵守が罰則を伴う義務となりました。あわせて、対象成分にデキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン(いずれも外用剤を除く)の2成分が新たに加わり、対象は合計8成分に拡大されています。

区分 成分
従来からの対象成分(6成分) エフェドリン、
コデイン、
ジヒドロコデイン、
ブロモバレリル尿素、
プソイドエフェドリン、
メチルエフェドリン
2026年5月1日に新たに追加された成分(2成分、外用剤を除く) デキストロメトルファン、
ジフェンヒドラミン

本記事では、以前から中心的な対象とされてきた6成分について、それぞれがなぜ乱用・依存のリスクを持つとされているのか、製剤研究者の視点で仕組みを解説します。

対象6成分は、なぜ乱用・依存のリスクを持つとされるのか

以下は、成分の薬理学的な位置づけを理解していただくための一般的な説明であり、摂取量や具体的な使用方法を示すものではありません。

  • エフェドリン・dl-メチルエフェドリン塩酸塩: いずれも「交感神経刺激薬」と呼ばれる系統の成分で、気管支を広げたり鼻づまりを改善したりする目的で配合されています。化学構造が覚醒剤成分と類似しているとされ、大量に摂取すると中枢神経を刺激し、不眠・動悸・興奮などが生じるおそれがあるとされています。
  • プソイドエフェドリン塩酸塩: エフェドリンと似た構造を持ち、主に鼻づまりの改善に使われる成分です。覚醒剤原料に転用されうる成分としても知られており、海外では薬局での対面販売や購入量の記録が求められる国もあります。
  • コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩: 脳の「咳中枢」と呼ばれる部分に働きかけて咳を鎮める成分で、化学構造上はオピオイド(医療用麻薬と同系統の物質)に分類されます。体内で一部がモルヒネに代謝される経路があるとされ、医療用の麻薬性鎮痛薬と同様に、大量・長期の使用により依存が形成されるリスクが指摘されています。
  • ブロモバレリル尿素: 尿素の誘導体に分類される鎮静成分で、中枢神経の働きを抑えることで、痛み止めなどの効果を助ける目的で複合的な解熱鎮痛薬に配合されてきました。中枢神経抑制作用があるため、大量に摂取すると意識障害などの重篤な症状につながるおそれがあるとされ、国内の市販薬乱用の議論でたびたび取り上げられてきた成分です。

いずれの成分も、決められた用法・用量の範囲では、咳・鼻づまり・痛みといった症状を緩和するために設計された医薬品成分です。問題となるのは、あくまで本来の目的を超えた大量・頻回の使用であり、通常の風邪症状に対して用法・用量を守って使用する分には、この制度によって使用そのものが制限されるわけではありません。

実務上のルール:陳列・数量・確認義務

指定濫用防止医薬品に該当する製品には、主に次のようなルールが定められています。

  • 陳列方法: 購入者が直接手に取れない鍵付きの陳列設備に収める、カウンターの内側に置く、あるいは店頭には空箱のみを陳列するといった対応が求められます。ただし、情報提供を行う設備から7メートル以内の範囲に陳列し、薬剤師または登録販売者を常時配置している場合はこの限りではないとされています。
  • 数量制限: 18歳未満の方には、複数個や大容量の製品の販売が原則として禁止されます。小容量(おおむね5〜7日分以下とされる)の製品に限り、薬剤師・登録販売者による対面またはテレビ電話等を用いた確認のうえで販売が可能とされています。
  • 確認義務: 販売時には、年齢、他の医薬品の使用状況、購入状況(他店舗での購入の有無を含む)、複数個・大容量を必要とする理由などについて、薬剤師・登録販売者が購入者に確認し、情報提供を行うことが義務づけられています。オンライン販売の場合も、対面と同様の確認・情報提供が求められます。

これらのルールは、正しく症状の緩和のために使用する方の購入そのものを妨げるものではありません。用法・用量を守って使用している限り、通常の咳止め・風邪薬としての使用に支障が生じる制度ではないとされています。一方で、自己判断で決められた量を超えて服用したり、複数の製品を併用したりすることは避けてください。症状が長引く場合や改善しない場合は、市販薬に頼り続けず医療機関を受診しましょう。

依存・乱用が心配なときの相談先

市販薬の使いすぎや依存が心配な場合、あるいは身近な方の様子が気にかかる場合は、一人で抱え込まず、かかりつけの医療機関・薬局に相談することが基本です。あわせて、各都道府県・政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターでは、薬物やアルコールなどの依存に関する一般的な相談を受け付けています。地域の相談窓口の詳細は、お住まいの自治体のホームページ等でご確認ください。

この制度に関連する当ブログの記事

指定濫用防止医薬品の対象成分は、実は多くの定番の風邪薬・咳止め薬・解熱鎮痛薬に配合されています。当ブログでは、それぞれの製品について成分の観点から個別に解説しています。

ドラッグストアで実際に取り扱われている対象商品をカテゴリ別に一覧で確認したい方は、指定濫用防止医薬品一覧:ドラッグストアで見かける対象市販薬まとめもあわせてご覧ください。

指定濫用防止医薬品とは何かのイメージ

まとめ

指定濫用防止医薬品は、2026年5月1日の薬機法改正により、依存・乱用のおそれがある医薬品成分の取り扱いが法律上の義務として整備された制度です。従来からの6成分に加え、デキストロメトルファン・ジフェンヒドラミンの2成分が新たに加わり、対象は合計8成分に拡大されました。陳列方法の工夫や数量制限、販売時の確認義務は、市販薬の過量摂取を防ぐための仕組みであり、決められた用法・用量を守って使用する分には通常の風邪薬・咳止め薬としての利用に支障はありません。棚での購入手続きが増えたと感じたときは、こうした制度の背景を思い出していただければと思います。

備考

  • 本記事は、指定濫用防止医薬品制度の一般的な説明を目的とした情報提供であり、購入方法の抜け道やまとめ買いの方法を示すものでは一切ありません。
  • 成分の依存性・乱用リスクに関する記述は、販売制度の背景を理解するための啓発的な説明にとどめており、過量摂取の具体的な方法等を示唆する意図はありません。
  • 記載した制度内容・対象成分は、2026年9月時点で厚生労働省公表情報・各社公式サイト情報により確認したものです。制度の運用は今後変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・都道府県の公表資料でご確認ください。
  • 本記事は特定商品の購入を推奨するものではありません。
  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状の診断・治療方針を示すものではありません。市販薬の使用について心配な点がある場合や、依存・乱用が疑われる場合は、医療機関や薬剤師、精神保健福祉センター等の相談窓口にご相談ください。現在治療中の薬がある方、体調に不安がある方は、自己判断で服薬を変更せず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

参考情報(調査日: 2026-09-20)

※本記事の内容は上記情報源に基づく執筆時点(2026年9月20日)の情報です。制度の運用は変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・お手元の製品の添付文書等でご確認ください。

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